集合住宅の調査・診断

通常、建物現状調査・診断の資料は、下記の事項により成り立っています。


第1:建物現状調査書

現時点での建物の状況(状態)を各部位別目視及び調査機械・器具で調査した方法と結果が記された図書。

外装部門  ・コンクリートの(中性化は、二酸化炭素によって生じる、鉄筋コンクリートの劣化のひとつです。コンクリートの主成分であるセメントはアルカリ性ですが、外部からの炭酸ガスの侵入によって中性化されると、鋼材の不動態被膜(金属表面の腐食作用に抵抗する酸化被膜)が失われ、耐腐食性が低下すると言われています。)中性化
 ・既存塗膜の(コンクリートの壁面やベランダの上裏に施工してある塗膜の接着力ことで、修繕の際には既存の塗膜の上に新しい塗装を塗り重ねることが多いため、現在の塗膜とコンクリート面の接着強度が不足していると新たに塗った塗膜が古い塗膜と一緒にはがれる危険性があり、既存塗膜の接着強度が7㎏/㎝2以上であれば問題ないといわれています。)付着力
 ・鉄部発錆 腐食状況
 ・仕上げ材の老化度
 ・亀裂 欠損 鉄筋(内部で腐食した鉄筋が膨張し、周辺のコンクリートを押し上げた状態を鉄筋爆裂と呼びます。)爆裂
 ・漏水調査 等
内装部門  ・内視鏡
 ・パイプカット(管内部の発錆調査)
 ・各施設の機能調査 等

第2:調査診断書

第1の調査に基づいて各状況(症状)の原因と対策方法を記された図書。

※第1と第2が一緒になっている図書もあります。


第3:工事仕様書

第2の診断に基づいて、工事の施工方法と施工材料が記された図書で、後に業者選定の時に同一条件見積(共通仕様書)の基礎となる資料。


第4:参考見積書

第3の仕様書に基づいて作成された見積書で、現時点でのおおよその工事予算が判断できる図書。

なお、この内容は今回調査した全部位の見積りで、絶対的に工事を施工しなければならない部位とは一致しません。また、予算取りという意味もあるので若干高めに設定してあります。


以上が通常言われている調査・診断というものです。このような資料作成手段として以下の方法が考えられます。


(1)無償で複数の施工業者に依頼する方法

この方法は無償ですが、資料の書式が各社各様なので、その比較検討には相当の専門知識が必要です。


(2)通常管理されている管理会社に依頼する方法

(1)よりは公平になりますが、事実上管理会社または管理会社の関係業者が、業者選定の折に有利になる可能性があります。


(3)有償で第三者機関に依頼する方法

もっとも公平な方法ですが、有償のため特別の予算取りが必要になります。

特に小規模世帯 は負担が大きくなります)。




大規模修繕工事の資金調達

(1)摺り合わせ作業

参考見書の金額と管理組合として工事実施時に確保できる金額(借り入れ又は積立て含めて)と比較した場合に、同等もしくは後者が上まわっている時は参考見積書の内容通り計画進行します。後者が下まわっている時は参考見積内容の再検討(施工範囲の縮小・仕様変更)が必要です。


(2)資金不足分の調達方法

借り入れ・・・・・・・・・・・・・・・・住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
特別積立・・・・・・・・・・・・・・・・短期間(1年くらい)
施工を延期・・・・・・・・・・・・・・2年くらい延期してその間で積み立てる
一時金の支払い・・・・・・・・・・各戸不足金額分


(3)修繕計画案(予算案と資金調達案)の総会承認

(2)の作業後、最終予算案と資金調達案について総会の承認を得ますが、 その後の業者選定等についても理事会に一任していただくよう承認してもらうのが望ましい方法です。そのために修繕委員会(理事会)があることを理解してもらいます。その時点で計画性に無理がある場合は区分所有者(居住者)の了解が得られず、計画が白紙に戻る恐れがあるので、全区分所有者(居住者)が納得の行く方法で行なわなければなりません。




施工業者の選定

以上各検討時には基準作りを行い、それに基づいて検討されると公平な判断が出来ます。また、業者内定時においては理事および委員のみで判断し、コンサルタント(管理会社担当者または第3者機関担当者)がいる場合は事前にコメントを書類で提出してもらい、内定時の理事会は同席させない方が発注者自身の意志が反映され易くなります。




着工後は施工管理が必要

修繕工事は、発注者・請負者双方の相互信頼に基づいて行われるものではありますがより良い工事にする為にも工事途中において双方が密に打ち合わせを行い、着工までに現れてこなかった諸問題に対処していかなければなりません。


(1)1ヶ月に2回程度の定期的打合せ会の開催

(2)新しい工程に入る前に、前工程の現場調査を可能な限り行なう

(3)双方の窓口の一体化をはかる ●発注者(修繕委員長)●請負者(現場管理者)


この部分については、発注者サイドが専門的な知識を有しない場合難しい点が多いと思いますが、請負者にまかせっきりにしないで、多くのコミュニケーションを取る事が重要です。また、コンサルタント(設計監理者)がおられる時はこれらの業務を代行してもらうのが良いでしょう。




居住者説明会

修繕工事は、居住者が生活しながらの施工となる点が、新築工事と根本的に異なります。施工に際して十分な注意と協力が必要となるので、事前に工事の内容・進め方を居住者に理解していただくために説明会を開催します。


(1)工事業者の紹介(特に工事管理者)

工事会社名、管理担当者名を居住者に認識してもらいます。


(2)工事工程説明(着工・完成)

いつ、どのような工事が行なわれ、各部屋に関係する内容を説明します。


(3)工事に関する注意および協力事項の説明

主にベランダの出入り、洗濯物干、サッシの開閉等の制限について説明します。


(4)仮設計画の説明と承認

作業員のトイレを始めとする仮説施設の設置場所を説明します。


(5)組合と業者伝達窓口の一体化

迅速かつ適正な問題処理を行うために、質問・意見・クレーム等の

連絡先についてご説明します。




居住者のみなさまへのお願い(例)

占有部・共有部の区分

足場仮設作業時または足場設置後、マンション敷地内の駐車場や駐輪場の使用が制限される場合があります。その際、臨時の駐車場や駐輪場が必要となりますが、敷地に限度があるため、マンションに仮場所を準備出来ないこともあります。外部に用地を手配する等、物件に応じた工夫を行い対処を行っています。


バルコニーにおける物干し

工事期間中、バルコニー内での物干しができない期間が生じるため、最も多くの問い合わせや苦情が出てきます。天候に左右されやすい工事の性格上、予定通り作業が進行せず、居住者の方々にご迷惑をお掛けすることがあります。出来る限り細かくお知らせを行い、物干しが可能な期間を工事の合間に設ける等の対策をとるようにしています。


バルコニーの物の移動

バルコニー内にある様々な物(物置や鉢植え等)を、作業が始まるまでに移動していただきます。構内空き地に置場を設ける場合や、各戸部屋内に移動していただく場合があり、事前に協議の上で対策を検討しています。


エアコン室外機の移動

バルコニー内にある物のうちエアコンの室外機は、その機種や古さによっては、冷媒ガスの抜けや故障が起きる可能性があります。通常各戸の実費負担により移動が行われることが多く、事前の調査により対処方法を個別に相談させていただきます。


塗料の臭気

最近ではシンナーを使用する溶剤系塗料ではなく、水性塗料を外壁塗装に使用することが多くなりましたが、それでも水性塗材特有の臭気が発生するため、外壁塗装作業時は臭いに悩まされてのご相談も寄せられます。


騒音の発生

基本的に塗装や防水工事を主体とした修繕工事では、大きな騒音が発生する作業はほとんどありませんが、足場仮設時や下地補修時には、使用する機械工具の音が騒音となることがあります。


防犯上の問題

建物外周に足場が設置されると、外部から足場をつたって上階のバルコニーまで達するのが可能となってしまいます。こうした問題への対策として、防犯用の金網や囲いを足場1階回りに設置する等の処置が取られます。




保証・アフターサービス

(1)保証書

内容・書式は、見積発注時に業者側に提示した共通仕様書に書かれています。また、内容とその確認が行われます。その時に見本を業者側から提出してもらうと良いでしょう。


(2)アフターサービス

保証と同様ですが、サービスと言っても中には有償のケースもあるので確認が必要です。